中小企業の承継に朗報!それが ”事業承継税制の特例”
事業承継税制って、いったい何?
中小企業経営者の高齢化が進んでおり、70歳を超える経営者は、今後10年間で245万人以上になります。それにもかかわらず半数以上が事業承継を終えていない状況です。そのような中で、事業承継を活性化させるべく、事業承継税制の大幅な見直しが行われました。(平成30年改正)
そもそも事業承継税制とは「中小企業を次世代に引き継ぐのであれば、相続税や贈与税を大幅に減免します」という趣旨です。
そして今回の改正では、10年間の期間限定で新たに「事業承継税制の特例」が設けられ、下記の2点が事業承継税制の目玉として注目されています。
(1)贈与税・相続税の対象株数・猶予割合の拡大 ⇒ 最終的に100%免除
(2)特例対象者の拡大 ⇒ 1人から、複数人でもOK
※要件はいずれもあり、記事最後まで確認下さい。
では具体的にみていきましょう。
対象株数・猶予割合の拡大
現行法(原則)では、適用対象株式数の上限が議決権株式総数の2/3に達する部分まで、納税猶予割合が贈与税100%(相続税80%)であったため、実際に納税猶予される部分は、贈与税2/3×100%=約66%、相続税2/3×80%=約53%でしたが、特例では、100%が猶予となり、事業承継時の納税負担はゼロとなります。これは承継にとって大きなメリットになりました。
特例対象者の拡大
従来の制度では、1人の先代経営者から1人後継者への贈与・相続のみが納税猶予の対象でしたが、特例では複数人の事業承継を認められ、実情に応じた多様な事業承継が可能となりました。
その他の見直し点
前述の2点の他に下記の点が見なされています。いずれも事業承継事情にあわせたものになり、承継する方にメリットがあります。
■雇用確保要件の実質撤廃(認定経営革新等支援機関の助言・関与)
■20歳以上の特例経営承継受贈者への相続税時精算課税の適用
(親族外でも精算課税の適用あり)
■経営環境の変化に応じた納税猶予額の減免
(赤字・売上減のため譲渡・合併・解散をして打ち切られた場合には、株価再計算をした上で、一部税額を減免)
事業承継税制を受けるための条件
ここまで読んで、承継を考えている方であれば「事業承継税制」を使わない手はないと思います。ただし「事業承継税制」は後継者が先代経営者に代わり、中小企業の事業を引継ぎ・継続することが前提となるため、いくつかの条件があります。
大きく3つの条件がありますのでご注意ください。
(1)中小企業であること
中小企業を対象とした制度であるため、該当の会社がそれに当てはまる必要があります。
卸売業:■資本金又は出資総額:1億円以下■従業員数:100人以下
サービス業:■資本金又は出資総額:5千万円以下■従業員数:100人以下
小売業:■資本金又は出資総額:5千万円以下■従業員数:50人以下
資本金基準 or 従業員基準いずれかを満たせば中小企業となります。
(2)5年間事業を継続し続けること
規定では「後継者が5年間代表者であり続け、株式を保有し続け、雇用の8割を守ること」となります。つまり先代から引き継いだ事業を継続することが条件となります。そして「雇用の8割を守る」という基準については今年度より、実質上の撤廃となり、事業承継税制が受けやすくなっています。
※雇用未達成の場合は理由報告が必要。経営悪化が原因である場合等は、認定経営革新等支援機関の助言・関与あり
(3)株式を保有し続けること
前述の事業継続5年が過ぎれば、代表者・雇用状況を気にする必要はありません。
ただし、最終的な納税免除をするには、株式の保有が必要です。
株式を他人に売却した場合、会社を解散してキャッシュ化した場合、いずれも今まで猶予されていた税金を払わなければいけません。
そして後継者が、事業承継税制を使って、次の後継者に事業を承継することができれば、最終的に税金免除となります。1代目から2代目に承継される時の税金は、2代目が3代目経営者に引継ぎできた場合に免除になるという仕組みです。
これだけ聞くと途方もない話のように思えますが、相続税などが数千万単位で掛かる場合や、代々事業を守り続けている方などは制度利用をすべきかと思います。
事業承継税制については規制緩和の流れで進んでいますが、細かい部分で認められない場合もありますので、検討の方は専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
※当記事は2018年5月掲載のものとなります。今後、法令・条例により内容が変更となる場合がございます。
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税理士法人コンパス/ さいたま 蕨 戸田 川口 税理士